大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成3年(わ)156号 判決

本籍

愛知県西加茂郡藤岡町大字西中山字蔵屋敷二四番地

住居

右同

会社役員

中村久夫

昭和二三年二月一五日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官大圖明出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、愛知県西加茂郡藤岡町大字西中山字上落三番地二において「中村コンクリート」の名称で浄化槽用コンクリート管製造業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、所得税の確定申告に際し、適宜の過少な所得金額を計上するところのいわゆる「つまみ申告」を行うなどの方法により、所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和六二年分の実際の総所得金額が七二四七万三五八九円であり、これに対する所得税額が三五三四万一七〇〇円であるのに、昭和六三年三月一五日、愛知県岡崎市明大寺本町一丁目四六番地所在の所轄岡崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が、一四二六万三三八五円であり、これに対する所得税額が三四二万五四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額三一九一万六三〇〇円を免れ、

第二  昭和六三年分の実際の総所得金額が一億八〇五万二一六一円であり、これに対する所得税額が五四二五万三六〇〇円であるのに、平成元年三月一五日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が、二〇七九万六三五二円であり、これに対する所得税額が五七三万二八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額四八五二万八〇〇円を免れ、

第三  平成元年分の実際の総所得金額が一億一四八万九四九円、分離課税による長期譲渡所得が二〇五四万六〇〇〇円で合計所得金額が一億二二〇二万六九四九円であり、これに対する所得税額が四九八七万八七〇〇円であるのに、平成二年三月一四日、前記岡崎税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が、二〇九一万二七三〇円、分離課税による長期譲渡所得が零円で合計所得金額が二〇九一万二七三〇円であり、これに対する所得税額が五六二万二〇〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額四四二五万六七〇〇円を免れ

もって、いずれも不正の行為により所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人の供述部分

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の被告人に対する質問のてん末書

一  被告人作成の上申書

一  中村早苗の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の加藤寿司、加藤久美、小池正樹、生田満、生田多恵子、藤垣哲也、鱸正文、加藤賢一、水野隆弘、徳本忠夫に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書一四通

判示第一の事実について

一  岡崎税務署長作成の証明書(昭和六二年分確定申告)、同(昭和六二年分修正申告)(平成二年六月一五日付け)、同(昭和六二年分修正申告)(同年九月一二日付け)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和六二年分)

判示第二の事実について

一  岡崎税務署長作成の証明書(昭和六三年分確定申告)、同(昭和六三年分修正申告)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(昭和六三年分)

判示第三の事実について

一  岡崎税務署長作成の証明書(平成元年分確定申告)、同(平成元年分修正申告)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(平成元年分)

(法令の適用)

被告人の判示各所為はいずれも所得税法二三八条に該当するところ、情状により所定刑中懲役刑及び罰金刑を各選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役一年六月及び罰金三〇〇〇万円に処し、右罰金を完納し得ないときは、同法一八条により金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 北澤章功)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例